孫助教がドイツの研究船ポーラーシュテルンに乗船・調査中です。毎週、調査の様子を報告します!
PS149「CONTRAST」航海での海氷観測を完遂(8/29更新)
「アルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所(AWI)の砕氷船PolarsternによるPS149「CONTRAST」航海は、2025年8月27日をもってすべての海氷観測を終了しました。海洋チームは同日16時30分、最終観測となる簡易型CTDをもって全プログラムを締めくくりました。そして海洋チームはこの成果を記念し、海氷上でささやかなセレモニーを行いました(写真)。上廣海洋学分野の特任助教・孫恩愛(Eun Yae Son)は、約40日間にわたり海氷下の乱流熱フラックスに加え、海洋の流速・塩分・水温のデータを取得しました。取得したデータは日本帰国後に精査され、夏季のグリーンランド周辺海域における海洋から多年性海氷への熱輸送についての議論を進める予定です。」
海洋観測終了、上廣海洋学分野横断幕と共に
氷の流れの変化で回収成功——Polarsternがステーション1に設置された観測機器を救出(8/22更新)
「海氷上のステーション1に設置した観測機器は、海氷がロシアのEEZ側へ流入してしまったため、回収が難しいと考えられていました。しかし、8月18日頃から北上した北極低気圧の影響で、海氷の流れが変化しました。これまでは東向きに流れていたのですが、この2~3日間は西向きの流れに転じました。その結果、ステーション1の観測機器がノルウェーのEEZ側へ移動しました。これを受けて砕氷船Polarsternは、進路を変更し観測機器の回収に向かいました。私たちはGPS情報を頼りに氷盤の間を漂う、浮体に取り付けられた機器を探索しました。回収作業では、流れに基づき位置を推定し、油圧デッキクレーンで吊るした作業用バスケット(通称「マミーチェア」)を用いました(写真)。作業中、GPSの送信が切れてしまう場面もありましたが、最終的には全ての機器を無事に引き上げることができました。これにより、海氷の隙間に取り残されたカメラブイ等の高価な機器と貴重な観測データの確保に成功しました。」
※ドイツ アルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所(AWI)のホームページにて、Polarsternの現在位置を見ることができます。
https://follow-polarstern.awi.de/?lang=en
通称「マミーチェア」と呼ばれる油圧デッキクレーンで吊るした作業バスケットに乗り、海氷上のカメラブイ回収に向かう研究者
ロシアEEZ近傍における季節海氷での新規観測(8/15更新)
「最初の観測対象であった季節海氷「アイスフロー1」がロシア排他的経済水域(EEZ)の境界内に漂流したため、ロシアEEZ境界付近に位置する新たな季節海氷上で観測を行いました。残念ながら、アイスフロー1で初回訪問時に設置した機器は、当該氷がEEZ外に流出しない限り回収が困難と見込まれます。新たな季節海氷上では、チーム・オーシャンがMSS(Microstructure Sonde、Sea & Sun)、CTD(SBE911+、Sea-Bird Electronics)、および採水などのルーチン作業を実施しました。また、アルフレート・ウェゲナー研究所所属の表層観測用無人潜水機「Otter」を用い、表層の水温、塩分、流速などの観測を行いました。」
水温と流速を測定する水中探査機 「Otter」
第2回海氷観測サイクル完了と機器回収の進捗 (8/8更新)
「海洋チームは、第1回訪問時に設置した観測機器からのデータ回収および再設置を完了しました。また、各ステーションにおいて、海洋乱流測定装置MSS(MicroStructure Sonde, Sea and Sun)やFishing-rod CTD(Sea and Sun)による観測を実施しました。現在、海氷は融解期に入り、第1回訪問時と比較して約10〜50 cmの厚さ減少が確認されました。特に、第1ステーションの一年氷では最も大きな融解が観測されました。リアルタイムで海氷の状態を監視するために設置されたカメラの映像では、第1ステーションの海氷の大部分が融解していることが確認されました。現在、Polarsternは、第1ステーションに設置された機器の回収を目的として、他の観測機器と共に設置されたGPSブイの位置へ向けて航行中です。」
北極航海における海氷観測 ― EM-Birdを用いた航空機調査 (8/4更新)
「本航海では、海氷観測のためにヘリコプターを利用したSea Ice Surveyに加え、グリーンランドに位置する北極観測キャンプ「Station Nord」から派遣される航空機によるSea Ice Surveyも併せて実施されました。観測に使用されたEM-Birdは、電磁誘導(Electromagnetic Induction, EM)の原理を利用し、海氷厚を連続的に計測する装置です。通常、EM-Birdはヘリコプターの下に長さ約10~20mのケーブルで吊り下げられた状態で飛行しながら観測を行います。この装置には送信コイルと受信コイルが備わっており、海氷と海水の電気伝導度の違いを利用して氷厚を間接的に測定することが可能です。これにより、広範囲にわたる海氷厚分布を効率的かつ高精度に把握することができます。」
異なる物性を持つ海氷の第一次観測完了 (7/25更新)
「ステーション3での最初の観測が終了しました。これにより、異なる物性を持つ海氷の第一次観測が完了しました。オーシャンチームは、ステーション3において海氷と海洋の境界面をモニタリングするために、エディ・コバリアンス・システム、音響ドップラー流速計、ミニムーアリングなどの機器を係留しました。これらの機器のデータは、2回目の訪問時に回収される予定であり、その後同じ場所に再設置され、3回目の訪問までのサンプリングが継続される予定です。」
ステーション3に係留された機器
第2多年生海氷ステーションでの観測開始と機器展開 (7/17更新)
「第2の海氷ステーションでの観測が開始されました。第1のステーションとは異なり、第2のステーションは多年生海氷上に位置しており、3年以上の年齢であると推定されています。CONTRAST航海の海洋チームは、4つのミニ係留観測装置および乱流観測用の音響ドップラー流速計(Signature1000、Nortek社製)を海氷上に設置しました。各係留には、4つの温度センサー(RBR Solo、RBR Global社製)と1つの電気伝導度・水温・水深(CTD)センサー(MicroCAT、Sea-Bird Scientific社製)が搭載されています。さらに、800メートルの観測ワイヤーを備えた自動CTD観測機器であるiAOOSも設置されました。」(写真参照)
北緯83度、観測初日にホッキョクグマ出現(7/14更新)
「ステーション1における初の氷上キャンプが、北緯83.45度・東経20.53度の一年氷上で始まりました。初日の朝、研究船Polarsternが停泊している氷上に一頭のホッキョクグマが現れたため、午前中の観測活動は中止を余儀なくされましたが午後には安全が確認され、観測活動は再開されました。上廣海洋学分野の孫恩愛特任助教は、午後の時間帯に無事に観測機器の設置を完了しました。」
孫特任助教がグリーンランド周辺の海氷調査へ出発(7/4更新)
「7月2日、ドイツのAlfred-Wegener研究所所属研究船Polarsternが、ついにノルウェー・トロムソ近郊のフィヨルドから出航しました。49名の研究者を乗せたこの船は、グリーンランド付近にある異なる年代の3種類の海氷上に「アイスキャンプ(氷上基地)」を設置するため、北極を目指しています。この研究航海には、上廣海洋学分野の孫恩愛(Eun Yae Son)を含む、北海道大学大学院水産科学研究院の研究者3名が参加しています。」
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